「ん。」

と差し出されたその花は、そのカットしていた花から1本引き抜かれた物だった。

「エーデルワイスね。花言葉は“大切な思い出”とか。」

「なんでわかったの」

「わかりやすすぎんだよ、お前。」

黒羽はいつも自分の夢を追いかけている。

「…それ、お客さんのじゃないの?」

包まれた花は、知識のない私にはバラぐらいしか名前がわからなかった。

「これは…違う」

真っ白で、小さくて、力強い花が私を見つめている。

「…ありがとう」

肩からズレ落ちそうになったトートバッグをくいっと肩に戻し、

私は店を後にしようとした。


「もう1つの花言葉、」

えっ、と思わず彼の方を振り向く。

「“勇気”」

目頭が熱くなるのがわかった。

今の私に1番必要な言葉だ。

「ありがとう!」

大きく叫び、私は彼のバイト終わりまで数十分、近くの海辺で待った。