「桜に舞られながら泣いてるお前に、
一目惚れした。」

元々変わってるやつだとは思っていたけど、ここまでだとは。

誰よりも早く。

あの時、東希ではなく、私に手を差し出したのが彼だったら。

私は、彼を。伊勢流星を…。

好きに、なっていなかった、だろう。

きっと、どんな出会い方をしても、私は東希に恋に落ちていた。

ははっ、と思わず笑みがこぼれてしまう。

「なに?」

彼は少し照れくさそうだ。

「ごめんごめん、ばかにしたわけじゃないから」

彼には申し訳ないがただ、嬉しかったのだ。

すごくあったかい気持ちになった。

私のことをちゃんと、見てくれている人はいる。

彼だけだど、ずっと執着していたものが、解けた気がした。

「瑠夏、ちょっと待ってて。」

そう言って彼は、もう一度店の中へ入っていってしまった。