「こんなに大事なこと黙ってて、本当に本当にごめん、

ずっと逃げてて、ごめんね……」

彼女は、泣きそうになっていた。

私は、彩絵が逃げてるなんて思ったこと、一瞬だってなかった。

それでも彩絵は、ずっと私への罪悪感と戦いながら、今日まで私の友人でいてくれた事だろう。

「彩絵、教えてくれてありがとう。」

彼女がううん、と小さく笑う。

「私、この後ちょっと、用事があって。

瑠夏、もし良かったら、このお店出て駅と反対の方に少し歩いていってみてくれない?

気が向いたらそこに花屋があるから、寄ってみて」

彼女はそう言い、お金を渡して席を立とうとしたが、私は彩絵、と引き止めた。

「彩絵は…。彩絵が、辛い思いをしない選択をしてね」

彩絵は一瞬間を空け、ありがとう、と零してこの店を出た。