思わず、彼女の方を見上げる。

彼女は座り込み、僕と目線を合わせた。

「白血病だったあいつが、なんのために自分の命投げ出してまであんたを助けたと思ってんの?

誰よりも瑠夏を思ってるからこそ出来たんでしょ?

そんで…誰よりもあんたを、信頼してたから…」

僕はまた、涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにした。

彩絵はポケットからハンカチを取りだし、僕の涙を拭く。

「何年もずっと、あんたを待ち続けた瑠夏が、東希の思いまで無駄にしてあんたのこと見捨てると思ってるの?

あんたが好きになった瑠夏が、そんなやつだと思ってるの?」

雨と涙で滲んでしまっていて、見えなくなったブレスレットが小さく光る。

……違う。

瑠夏は真っ直ぐ向き合うやつだ。誰かのためにいつも涙を流して、立ち向かって。

それが、僕の初恋の人だ。

僕と東希の、初恋の人だ。