今思えば彼は僕を恨んでいたと思う。

彼には残酷な未来を背負わせてしまったから。

彼女の記憶さえも失わせてしまったから。

小学6年生の夏に、彼女と彼を含んだクラスメイト数人で、近所のお祭りへ行った。

彼女は普段とは違う、赤色の花を咲かせた浴衣を着てきていた。

真っ黒で綺麗な髪によく似合っていて、

率直に言えば、見惚れてしまった。

それは彼も同じだった。

彼の送る恋の視線は、きっと気づいていたのは僕だけじゃないと思う。

だけど、花火が上がるまで30分前だというアナウンスが流れた辺りで、

彼の視線が彼女の足元に行っているのに気がついた。