「好きです。ずっと、前、から。」

白血病だと診断されて、1ヶ月ほどたった日の事だった。

ずっと前…?いつ、から?

あまりにも突然で、あまりにも残酷だった。

僕には、彼女に病気をうちあけて、僕の本心を伝えて

彼女にこの後悔と残酷さを味合わせる勇気なんてなかった。

冷たく、突き放すことすら。


ただ振り絞って、今にも消え失せそうなほど情けない、

「ごめん」

その一言しか、出すことが出来なかった。

その頃には、あの頃の暑い太陽はすっかり弱々しくなり、

冷たくなった風が僕の肌を突き刺して、

それすらも、僕を馬鹿にしているように感じられた。


何もかも気づくのが遅すぎた。

彼女の本心も、病気を発見したのも。

その病気の、重さも。

ようやく僕は、


「死にたくない」


そう思った。


僕には時間も、余裕も、未来も残されていなかった。

これ以上記憶を上書きすることが出来なかった。

それがどんなに虚しくて、哀れなことだろうか。