グレゴリーの前に立つと、すぅ、と短く息を吸い込んだ。



「グレゴリー様」



 呼びかけにグレゴリーの肩が揺れ、ゆっくりと顔が持ち上がる。

 灰色の瞳がシエナの姿を認め、驚いたように丸くなるのがわかった。



「シエナ……どうしてここに。まさか先ほどのパーティに参加していたのか」

「……はい」

「そうか……なら見られていたのだな」



 困ったように眉を下げるグレゴリーにシエナの胸がきゅうっと音を立てて締め付けられた。

 優しいグレゴリー。大好きなグレゴリー。彼を元気づけるためながら、多少の恥はかき捨てられる。



「大丈夫ですか? 私の、むっ、胸でも揉みますか?」



 びゅうと、二人の間に大きな風が吹きすさんだ気がした。



「……………………………………は?」



 たっぷり十数秒の間を置いて、グレゴリーが大きく目を見開く。

 普段はきりりとしている口元をぽかんと開かせ、あっけにとられた、と形容するのがふさわしい表情を浮かべる姿に、シエナは心の中で悲鳴を上げる。



(わぁあああああああ!! 私のばか!! ばか!!)



 自分の発言に対する後悔と羞恥でシエナはその場に転がり回りたくなった。