「ただいまシエナ」
「おかえりなさいグレゴリー」
疲れた顔をして帰宅した愛しい夫をシエナは笑顔で出迎える。
かいがいしく世話を焼き、二人で寝室へと向かう姿はおしどり夫婦そのものだ。
ベッドに並んで腰掛け他愛のない話をしていると、不意にグレゴリーが動きを止め、熱おびた目線をシエナに向けた。
「ねえシエナ。俺とっても疲れてるんだ」
甘えた、お菓子をねだるようなグレゴリーの声音にシエナは彼が何を欲しているのかをすぐに察する。
何年経ってもこれが合い言葉になるのなら、あのときに口にしなければ良かったと考えたこともあったが、後悔はしていない。
きっとこれからも、シエナはグレゴリーだけに告げるのだろう。
「大丈夫? 私の胸でも揉みますか?」