思わず言い返せば、グレゴリーは心から嬉しそうな笑みを浮かべる。
「だろう? 俺はねシエナ、君を幼い頃からずっと見てきた。君はまっすぐで純粋で優しくて……嘘や偽りから一番遠い存在だ。そんな君にあんな風に誘惑されて、俺はよく耐えたと思わないか?」
「え、ええ……」
「最初はどこの誰に入れ知恵されたのかとはらわたが煮えくり返りそうになったが、理由を聞いて納得したよ。まあ、余計なことを教えた罰は当然受けてもらうけどね」
微笑むグレゴリーから感じる剣呑な空気に、シエナは心の中で兄に謝罪した。
「元気づけるために、この無垢な体を差し出そうとするほどに俺を好きでいてくれたんだね。嬉しいよシエナ。本当に嬉しい」
壊れ物を扱うように優しく抱きしめられ、シエナの胸が愛しさでいっぱいになる。
色々と聞きたいこともあるし、彼の語った言葉の半分もまだ理解できていない。
想像していたよりもグレゴリーという人は凄い人だということだけはわかったが、そんなことぐらいで冷めるような恋心ではなかった。
「シエナ、大好きだ。結婚しよう」
「……はい」
気がついたときにはシエナはしっかりと頷いていた。
泣きたいほどの幸せを感じながら、グレゴリーの胸に頬を寄せる。
「……ところでシエナ」
「はい?」
「さっきの件、まだ有効かな」
「はい?」
何のことだろう、とシエナが首を傾げれば、グレゴリーがほんのり頬を染めてシエナを見下ろしていた。正確には、シエナの胸元を。
「胸、揉んでもいい?」
「……! だ、だめです!!」
「さっきは揉む? って聞いてくれたじゃないか」
「そ、それは元気づけようと思って……グレゴリー様はじゅうぶんお元気じゃないですか!」
「まあ確かに元気だけど、シエナが揉ませてくれるならもっと元気になれるかなぁって」
「~~~~~~!」
耳まで真っ赤に染めたシエナははくはくと口を開閉させ、目の前の愛しいグレゴリーを睨み付けたのだった。