てっきり、高校卒業してから裏社会一筋なのかなと思ってた。



「大学生、なんだ」

「うん。大学一年生」



なんだろう、感じ取っていった距離感が、ぐっと近づいた気がする。

もっと、遠い存在だと思ってたから。

紫杏くんのことを知れて、嬉しい…。



「頬ゆるゆるだね。可愛い」

「…っかわ……‼︎」




緩く頬を引っ張る紫杏くん。

最近の紫杏くんは、破壊力が増してきてる。

力加減がびっくりするくらい優しくて、ドキドキしか残らない。

そんな私を、妙に色っぽさを含んだ瞳で見つめてくる紫杏くん。

これ以上はダメだって、頭が警報を鳴らしたので、頬に触れてる手を掴んで下ろし、問題集を出す。

わからない箇所のページを開いて、紫杏くんに聞くと。

とても優しく、丁寧に一から教えてくれるから、先生よりもわかりやすかったり。

…ただ、一つを除いては。



「紫杏くん、この…体勢は…?」

「体勢?このほうが教えやすいから我慢して」



後ろから抱きしめられてるような体勢で。

我慢、できるのだろうか。

…でも、この体勢のほうが教えやすいなら我慢するしかないよね。