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家に着くと、とりあえずリビングに向かう。

お母さんが帰ってくるまではまだ時間があるし、今は2人きり。

確か、甘いものが苦手だと言っていたから、烏龍茶を紫杏くんに出した。



「ねぇ、花澄ちゃん」

「…うん?」



心なしか低い声で名前を呼ばれる。



「勉強、しよっか」

「勉強…」



私の家で何するんだろう、と思ってたけれど、勉強…?



「そう、勉強。花澄ちゃん、理数系苦手なんだっけ」

「…うん」



苦手、だけれど…。



「なんで知ってるの…?」

「今日の勉強会見てたらわかるよ。宮西クンにたくさん理数科目教えてもらってたね」

「うっ……」



…その通りで。

理数科目は大の苦手分野で、たくさん聞いてた気がする。



「それじゃあ、問題集出して。俺が教えるから」

「紫杏くんって、教えられるの…?」

「…俺をなんだと思ってたの、花澄ちゃん。俺、今大学生なんだけど。高校の勉強くらい教えられるよ」



大学生…って、え⁉︎

初耳なんだけれど……。