紫杏くんの胸元にグッと顔を押し付ける。

大胆なことしてるなって、もちろん分かってるよ…?

でも、顔を隠せないよりはまだいいかな…って。



「……ねぇ、それはダメじゃない?」



頭上から降ってくる声。

何も返さないでいると、ため息が落ちてきた。



「花澄ちゃん、溜まり場から出たけど」

「……?」

「家着くまでこうしてようか?」

「……っわ、ごめんなさい!」



溜まり場から出て、あの細い道も通り抜けて。

大通りに出たところ、で。

無数の視線を感じる。

バッと紫杏くんから勢いよく離れた途端、グーッとお腹の音が鳴る。

それに、クスクス笑う紫杏くん。

すっごく恥ずかしい…。




「それじゃあお昼ご飯食べたら帰ろっか。お腹空いたよね」



笑いながらそう言った紫杏くんに頷こうとして、やめる。

左腕から覗く、深い傷。

よく見れば、服にも血がついていて。



「ここから紫杏くんの家って近かったよね?」

「うん、近いけど…?」

「じゃあ、まず紫杏くんの家行かないと」



傷の手当て、しなくちゃ。