「ないです…、今調べ中ですが、」

「ないならいいです。…黒瀬くん、身分の特定は頼みました。大雅くんと紫杏くんは着いてきてください」

「言われなくてもそのつもり」



紫杏くんがボソッと呟いた後、私に視線を移す。



「花澄ちゃん、ここで待っててくれる?」

「うん…、待ってるけど」



けれど。



「無事に帰ってきてね…?」



ただならぬ空気は、何も知らない私にも感じるもので。

不安になって、そう問いかける。



「もちろん」




口角を上げて私を見つめた後、東郷さんたちと一緒に店内を去っていく。

気付けば、黒瀬くんもいなくなっていて。

…少し、ううん、結構心細い。

それに、侵入者とか一般人じゃないとか、どういうことなんだろう…?

危ないこと…だよね、きっと。

騒がしくなる店内に不安を隠せない私。

きっと、今ここでは大変なことが起きてる。