やっぱり。
好きでもない人のファーストキス奪うのって、重いし抵抗あるよね…。
狙ってやったわけじゃないけれど、沈んでく心。
思わず顔を下に向ける。
「ファーストキスはちゃんと、好きなやつにあげないと。不可抗力とはいえ、後悔するよ」
…それって、私のことを考えてキスを防いでくれたってことなのかな。
でも、好きなひとは紫杏くんだから後悔しないのに、なんて。
その言葉は心に押し留めておく。
「…でさ。花澄ちゃんって宮西クンのこと好きなの?」
「……んぇ⁉︎」
私が、宮西くんのことを好きって…?
びっくりして紫杏くんをみると、鋭く探るような瞳でこちらを見ている。
「宮西くんをって、どうして?」
「どうしてって、なんとなく」
「ご、誤解です‼︎宮西くんのことは、それは尊敬してるけれども好きじゃないから…」
慌てて弁明すると、軽く息を吐いた紫杏くん。
心なしか、私を見る目が優しくなった気がする。