「お疲れ様、菜々海ちゃん!お先ね!」

「はい。お疲れ様でした!」

 私はまだ入って二年で、このお店の中では一番下っ端だから、閉店した後の最後の片付けや戸締まりは、下っ端の私の仕事なのだ。

「おー菜々海、お疲れさん」

「ゆ、悠月さん! お、お疲れ様です!」

 そこに休憩だと思われる悠月さんが、後片付けをしている私の元へとやってくる。

「菜々海は本当に、毎日元気だな」

 悠月さんはそう言いながら、コーヒーを飲んでいる。

「そ、そうですか?」

「ああ。疲れているだろうけど、それを一切見せない菜々海が、羨ましいくらいだ」

 と、悠月さんは私に言う。

「そんな……。私にはそれくらいしか、取り柄がないだけです」

「そんなことない。 菜々海の笑顔に、みんな癒やされてるよ」

 そんなことを言ってくれるのは、悠月さんくらいしかいないと思う。
 悠月さんは本当に優しい。でもその優しさは、時にずるいんだ。

「……悠月さん」

「ん? どうかした?」

「い、いえ!……何でもないです」

 しまった、てっきりこのまま「好きです」と伝えてしまいそうになってしまった。