「せっかくのデートなのに、そんなだれだかわからなくなるくらいの変装なんてしたくねぇよ」


わたしとのデートは、なるべく素顔の自分をさらけ出したいんだそう。


「俺だって、できることなら変装なんかしたくないよ。…でも、楽しみにしてたしずくとのデートだから、だれにも気づかれずにゆっくり過ごしたいし」


りっくんも、この日のデートを楽しみにしてくれていたんだ。

それをファンのコに追っかけ回されちゃったら、元も子もないもんね。


変装はキャップと伊達メガネだけだけど、たったそれだけでも顔をまじまじと覗き込まれない限り、おそらくりっくんだとは気づかれることはないだろう。


それに、人気モデルが平凡に街に出歩いているなんて、だれが想像するだろうか。

しかも、彼女といっしょにいるなんて。


たぶん、その辺によくいるカップルにしか見られていないはず。