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「瑞希ちゃん!悪いけど、これ大至急午前の便で出してきて!」

「はぁい!」

私は封書を受け取ると、斎藤務弁護士事務所と書かれたガラス扉を開け外に飛び出した。

見上げると青空がキラキラと眩しく、街路樹の新緑が風に煽られ揺れている。

「急がなくちゃ」

私は胸に封書を大事に抱えると、事務所から十分程歩いた先の郵便局へ急いだ。


三年前、亮がロンドンに発ったすぐ後、会社を退職し、


充と離婚する。


全てを正直に伝え、別れたいと自分から告げた。

嘘をつかないことで彼をひどく苦しめ傷つけたかもしれないけれど、それが私の最後の誠意だった。


仕事を辞め、全てをリセットしたことで、亮ともそれきり連絡を取っていない。取りたくても取れない状況を作ったと言う方が正しい。

まさか私が退職するなんて彼も思いもしなかっただろう。

きっと怒ってるよね。

亮のことは大切だったし大好きだった。もちろん今でも忘れられない人。

独身に戻ったこの三年間で、いくつかの出会いもあったけれど本気で好きになれる相手はいなかった。

それなのになぜ亮と離れたのか?

百合にも何度も尋ねられた。

不倫した上に自分一人が幸せになってもいいのかという罪悪感が常にまとわりついて、亮ときちんと向き合える自信がなかったのかもしれない。

でも、きっと今をしっかり生きて自然の流れに身を任せていれば、本当に必要な出会いが訪れるはずだと、最近は新しい恋に対して少し前向きに考えられるようにもなってきた。