こんな素敵な場所でと思ったけれど、やっぱり私達は最初は生ビールでなくちゃ。
生ビールが運ばれてくると、乾杯し柔らかい泡と一緒に喉元に流し込む。目の前に広がる夜景を見ながら飲むビールは格別に贅沢だった。
その後は、お酒に合う豪華なオードブルや、刺身、パスタをつまみながら楽しい晩餐の夜は更けていく。
バーに入ってから一時間ほど経っただろうか。そんなに飲んでなかったのに、このラグジュアリーな雰囲気に気分は最高だった。
「急に飲みに誘ってくるなんて、何かあった?」
ほろ酔いの私はクスクス笑いながら彼に尋ねる。
「何かないと誘っちゃいけない?」
「別にそんなことはないけどさ。亮から言い出すのって珍しいから」
「まぁ、今日はちょっと瑞希さんに折り入って伝えたい話があった」
「じゃ、陽子はいなくてオッケーだったんだ」
「ああ、むしろね」
何を話してても楽しくて、敢えて陽子を突き放した彼のその言い方に思わず吹き出す。
そんな時、ふいに亮が言った。
「そういえば、今日昼に東条と食べに行ってたみたいだけど」
あ、きたきた。やっぱり折り入っては奈美恵の話?
「うん。行ったけど?」
「あいつ、お前に余計なこと言ってなかった?」
「余計なこと?」
「俺と、何ていうか……いい関係だとか、付き合うかもしれないとか、そういうこと」
亮は不機嫌な様子で飲み干したグラスをテーブルに置いた。
「まぁ、そんなこと言ってたかな」
「やっぱりか」
そう言うと、亮は大きく息を吐き足を組み替え額に手をやった。
「実は困ってるんだよね、東条には。一カ月前、一度だけ東条から誘われて食事に行ったんだ。ほんと食事だけだぜ?なのに、俺との関係のあることないこと周りに言いまくってるらしくてさ」
あー、例の話か。あの話は全てでっちあげってことだったのね。
「そういえば言ってたような気がする」
私も適当にはぐらかしながらも、亮が彼女のことをきちんと理解していたことに安堵した。
「それ以降、東条から付き合ってほしいって毎日のようにLINE攻撃なんだ。だから俺も今好きな人がいるから無理だって断ったんだけど、俺の好きな人が社内なのか、どういう相手なのかとかしつこく詮索してくるんだ。あんな奴だと知ってたら絶対食事にはいかなかったよ」
うんうん。確かに。私も今日彼女の言動にびっくりしたもん。
「好きな人いるならその人とさっさと付き合っちゃえばいいのに」
私はそう言うと肩ひじで彼の腕を小突き、ワインクラスを傾けた。
「そう簡単に付き合える相手じゃないから」
亮は私からすっと目を逸らしワインを飲む。
「またまたぁ、照れちゃって!」
この赤ワインも極上でおいしい。亮を冷かしながらも更に口に運んでしまう。
「……俺さ」
「ん?」
顔を向けると、テーブルに置いたグラスをじっと見つめたまま、何かを思い詰めたような亮の横顔があった。
私もグラスをテーブルに置き、彼の方に体を向ける。
生ビールが運ばれてくると、乾杯し柔らかい泡と一緒に喉元に流し込む。目の前に広がる夜景を見ながら飲むビールは格別に贅沢だった。
その後は、お酒に合う豪華なオードブルや、刺身、パスタをつまみながら楽しい晩餐の夜は更けていく。
バーに入ってから一時間ほど経っただろうか。そんなに飲んでなかったのに、このラグジュアリーな雰囲気に気分は最高だった。
「急に飲みに誘ってくるなんて、何かあった?」
ほろ酔いの私はクスクス笑いながら彼に尋ねる。
「何かないと誘っちゃいけない?」
「別にそんなことはないけどさ。亮から言い出すのって珍しいから」
「まぁ、今日はちょっと瑞希さんに折り入って伝えたい話があった」
「じゃ、陽子はいなくてオッケーだったんだ」
「ああ、むしろね」
何を話してても楽しくて、敢えて陽子を突き放した彼のその言い方に思わず吹き出す。
そんな時、ふいに亮が言った。
「そういえば、今日昼に東条と食べに行ってたみたいだけど」
あ、きたきた。やっぱり折り入っては奈美恵の話?
「うん。行ったけど?」
「あいつ、お前に余計なこと言ってなかった?」
「余計なこと?」
「俺と、何ていうか……いい関係だとか、付き合うかもしれないとか、そういうこと」
亮は不機嫌な様子で飲み干したグラスをテーブルに置いた。
「まぁ、そんなこと言ってたかな」
「やっぱりか」
そう言うと、亮は大きく息を吐き足を組み替え額に手をやった。
「実は困ってるんだよね、東条には。一カ月前、一度だけ東条から誘われて食事に行ったんだ。ほんと食事だけだぜ?なのに、俺との関係のあることないこと周りに言いまくってるらしくてさ」
あー、例の話か。あの話は全てでっちあげってことだったのね。
「そういえば言ってたような気がする」
私も適当にはぐらかしながらも、亮が彼女のことをきちんと理解していたことに安堵した。
「それ以降、東条から付き合ってほしいって毎日のようにLINE攻撃なんだ。だから俺も今好きな人がいるから無理だって断ったんだけど、俺の好きな人が社内なのか、どういう相手なのかとかしつこく詮索してくるんだ。あんな奴だと知ってたら絶対食事にはいかなかったよ」
うんうん。確かに。私も今日彼女の言動にびっくりしたもん。
「好きな人いるならその人とさっさと付き合っちゃえばいいのに」
私はそう言うと肩ひじで彼の腕を小突き、ワインクラスを傾けた。
「そう簡単に付き合える相手じゃないから」
亮は私からすっと目を逸らしワインを飲む。
「またまたぁ、照れちゃって!」
この赤ワインも極上でおいしい。亮を冷かしながらも更に口に運んでしまう。
「……俺さ」
「ん?」
顔を向けると、テーブルに置いたグラスをじっと見つめたまま、何かを思い詰めたような亮の横顔があった。
私もグラスをテーブルに置き、彼の方に体を向ける。