その後、結婚式は……理玖はとても嫌がったが、半年後に決まった。
せっかくウエディングドレスを着るなら、ちゃんとダイエットもしたいし、指輪のデザインも時間をかけて作りたいからという私の意向と、なるべく早めに結婚式をしたいという理玖の意見の折衷案がこれしかなかったのだ。

場所は、表参道にある日本で有名な式場。
ウエディングドレスも、なんと理玖がデザインし、理玖の取引先の1つであるドレスメーカーに作ってもらうことになった。

「美空が身につけるものは、全て俺がつくる」

と聞いたときは、流石に冗談かと思った。
でも、彼のアイディアスケッチに生み出されるティアラ、ベール、ウエディングドレス、そして靴はやはりどれもこれもが私好みの素敵なデザインばかり。
10年前に嫉妬した才能をまざまざと見せつけられた。
でも、あの頃みたいに逃げ出したいとは思わなくなっていた。
むしろ、この才能に愛された自分の才能も、信じたいと思えるようになった。


「さて、どんなデザインを作ろうかな」

私は、彼の指の肉感を思い出しながら鉛筆を走らせた。
時々、ベッドの時の理玖の手の動きを思い出して、濡れそうになったのは絶対に秘密にしようと思った。