遂に卒業式の日。朝から憂鬱で、ずっとずっと泣いていた。

「私だって……普通に……みんなと卒業したかった……!橘くんに、好きだって言いたかった……のにぃ」

なんで、なんで私こんな時に癌になっちゃったんだろう……。神様、酷いよ……。

「律歌!」

突然、お昼すぎの静かな病室に明るい声が聞こえた。この声は、親友の朱里だ。

「朱里!?なんで……みんなも……あ、」

朱里と、3人の友達、それと……。

「橘……くん」

私の大好きだ……橘くんがいた。なんで、なんで?ここ病院だよね……?今日、卒業式だよね……?

「橘くんに聞かれて、律歌が入院してること話したら病院の場所まで聞かれて、担任の先生に頼み込んで律歌の分の卒業証書も貰ってきたの」

朱里が、柔らかく微笑みながら話してくれたけれど、理解は追いつかなかった。橘くんが、私のために……?卒業証書……?

「俺、ずっと桜木さんのことが好きで、卒業式に告白しようと思ってたんだけど卒業式にも来てなくて……気がついたら勝手に体が動いてた。ごめん」

頬を赤く染めながら私の目を見て真剣な顔で言ってくれる橘くん。これ、夢じゃないよね……?私今、橘くんに告白、されてる。

「卒業、おめでとう。桜木律歌さん」

橘くんが、私に卒業証書を差し出しながらそう言ってくれた。嬉しくて、嬉しくて涙が出そう。おかしいな、もう涙は全部だしきったと思ったのに。

「……ありがとう、橘晶結くん。私も……好きです」

ドキドキした心臓を抑えながら、私も橘くんの目を見てはっきりと言った。卒業式ができるなんて……、告白されるなんて、両思いになれるなんて……。一時は、病みそうなくらい辛かったけど、それがあったからこそ「今」がこんなに幸せなんだろうな。

「みんな、ありがと」

ニカッと微笑みながらそう言った私の目からは、涙が一筋こぼれ落ちた。