きっと、優人なら引き留める。


私を手放さないように。


だから早く呼んで。蘭!って呼び止めて。


振り返る気満々の私の背中にブュウと風が吹く。


遅い。まだなの?まだ優人は部活か私かで悩んでるの?



はぁ、しょうがない、これなら私が先に振り返ってあげるよ。これで優人も決心がつくんでしょ。


「────優…………、人………?」


振り返った先にいたのはさっき座ったベンチ。


いない、優人がどこにも。


辺りを見回しても人混みに混じれてそれらしき背中は見当たらなかった。