「では、始めていきましょうか」

その一言でふと我に返る。

後日、僕と黒田さんは葬儀屋の最寄り駅で待ち合わせ、歩いて葬儀屋に向かった。

黒田さんは小柄で、僕の頭1つ分くらい小さかったが、その横顔はやはり綺麗だった。

歩きながら、すぐ傍に綺麗な女性がいることにずっと緊張していた。

けれど、この人はただ者じゃない。

綺麗だけれど、ただの綺麗な人じゃない。

あの日は何かに囚われてしまったように、疑うということも拒むということも忘れて聞き入っていたけれど、あれから暫く頭を冷やすうちに、だんだん恐ろしく感じてきた。

第一、人の心なんてどうやって見るんだ。

今からとんでもないことが起こってしまうような気がして、胸騒ぎがする。