母が亡くなってから葬儀までには何日か時間があった。

その間に一度葬儀屋に行く機会があり、そこにあの女性も連れて行くことにした。

「申し遅れました。私、黒田と申します。何かございましたらこちらまでご連絡ください」

そう言って女性に差し出された名刺を受け取る。

「では、また」

黒田さんはにこやかに手を振ると、颯爽と歩きだす。

僕は彼女の背中が見えなくなるまで、呆然とその場に立ち尽くしていた。

いつの間にか辺りは暗くなっていた。

僕も彼女とは反対方向へ歩いていった。