「心が、溶ける……?」

背筋が寒くなる。

「ええ。溶けている方は、亡くなる直前に精神的な苦しみを抱えていた方、死因に結びつくのが心だった方……これも、自殺だった方は多いですね」

どうして自殺した人の話ばかりするのだろうか。

「最近、身近で亡くなられた方がいらっしゃったりしますか?」

「はい、母が……」

もし身近に亡くなった人がいなかったら、この人ただの変人じゃんと思いながら、僕は頷いた。

「お母様が……。それはご愁傷様です。もしよろしければ、お母様の心を拝見させていただきたいのですが、よろしいですか? 安心してください、もちろん肉体の解剖とは全く違うので。心を詳しく分析すれば、遺言や内に秘めていたお気持ちなどもお聞きいただけます。自殺のように精神的な理由で亡くなられた方、植物状態などで生きていたときから意思疎通を図れなかった方のご遺族が、よくご利用になっております」

ごくりと唾を飲み込む。

「……お願いします」

思った以上に低い声が出る。

何も見えない、何も見えない状態だった母さんの、唯一最後まで自由だった心。

母さんが最期、どんな思いだったか、見てみたかった。