夕焼け。

母さんが亡くなったときも、今みたいに、綺麗な夕焼けが見えた。

病院からの帰り道。

心が暗く塞がって、雲の隙間から穏やかな光を放つ夕焼けが眩しく見えて、直視出来なかった。

でも、こんなに美しかったんだ。

今日は、じっくり眺められた。

母さんの思いを知って、少し心が洗われたのだろう。

ちらっと横を見ると、黒田さんの整った横顔があった。

彼女は眩しそうに少し目を細め、夕焼けに心を奪われているように見えた。

「さて、そろそろ行きましょうか」

暫くして、彼女は僕の方に向き直って言った。

「はい」