「お母様のお気持ち、知れて良かったですか?」

「はい……もちろんです」

再び目に涙が溜まっていくのが分かった。

そんな僕を、黒田さんは優しい笑みを浮かべて見ていた。

「ふふ、お役に立てて嬉しいです」

「本当に、ありがとうございます。僕だって……本当は、母さんの生の声で、生きているうちに、今聞いた話を聞きたかった。でも、母さんにはそれが出来なかった。もう、諦めていたんです。母さんとの意思疎通なんて。だから僕は、母さんの最期を見届けるまで、独り言みたいに、人形に話しかけるみたいに、何も言わなくなってしまった母さんに、ずっとたわいのない話をしていました。そりゃあ内心、かなりきつかったです。だからあの日、あなたが現れて、まさか母さんの声を聞けるなんて思っていなかったので、本当に感謝しかありません」

素直な気持ちだった。

黒田さんを怪しい人間だと疑っていたことが恥ずかしくなった。

もちろん本人には言っていないけれど。