プレゼント、とってもあげたい……。
けど……どんなものあげればいいかわからない。
というこで、いまは莉奈ちゃんの家で莉奈ちゃんに相談中だ。
「んー。なにがいいんだろうね」
「うん……全然わからない……」
「まぁ、あの溺愛先輩のことだし、『真白ちゃんからもらったものならなんでも嬉しいよ』とか言いそうだわ」
「あはは……」
たしかに先輩はとっても優しいから、あり得る……。
「んー……あ!じゃあ、おそろいのなにか買ったら?」
「おそろい?」
「うん、小さいぬいぐるみのキーホルダーとか!」
「あ!それいいかも!」
小さいくまちゃんとかのキーホルダーで、おそろいでつけられたらいいな……!
よし、先輩へのプレゼントはおそろいのキーホルダーで決定だ!
「私も莉央に買いたいものあるし、一緒に行かない?」
「あ、うん!やったー!」
その時、スマホが震える。
……?メール?
あ、先輩からだ……!!
ドキドキしながらメッセージを開く。
と……。
【真白ちゃん、今日暇だったら美味しいもの食べない?】
そんなメッセージが届いていた。
っ……た、食べたい……。
けど、それよりも先輩へのプレゼントを買わなくちゃ。
どうにか我慢をして、先輩へ
【すみません……!今日は用事があるので】
そのメッセージを送った。
「どうかした?」
「あ、ううん!じゃあ行こう!」
「うん!」
そして、3時間後。
買い物を終えて解散して、いまに着いたところだった。
ガチャンッ
「ただいまー!」
「……あ、おかえり真白ちゃん!」
「……え?」
千星、先輩……!?
「な、なんで先輩がいるんですか!?」
「真白ちゃんのお母さんに仕事が忙しいから真白ちゃんの面倒見ててって言われて」
「えええっ……!?」
お、お母さん千星先輩と親しすぎじゃ……!?
「……それでさ、こんな時間までどこ行ってなにしてたの?」
「こ、こんな時間って、まだ4時ですよ!?」
「十分遅いよ」
いやいや全然遅くないでしょ……!
「誰といたの?」
「莉奈ちゃんです」
「……嘘だね。詳しく聞かせてもらうから」
「えええ……」
逆に莉奈ちゃん以外に誰と出かけてるのって感じなんだけど……。
ひとまず荷物を置いて、手を洗う。
……はぁ……どうやって誤解を解こうか……。
「え、えっと、先輩」
「こっちきて」
ソファに座っている先輩はぽんぽんと膝を叩いてまるで私にここに座れと言わんばかりの顔をする。
とりあえず私は先輩の隣に腰掛けた。
「……ここ、座ってよ」
「そ、それはさすがにできません……!」
「なんで?だって僕たち付き合ってるでしょ?」
「け、けど……」
そんなの、ドキドキしすぎて心臓もたないよぉ……!!
「むむっ……無理です!恥ずかしすぎます!それに、重いですよ私」
「ふふっ、重いわけないでしょ」
「!?」
私の頬を手のひらで包み込んだ先輩は、次第に頬を摘んで引っ張る。
「ひぇ、ひぇんあいっ……?」
「ふふっ、可愛い」
「な、ないすうんでうか……!?」
(なにするんですか!?)
「ん〜?なんだろうね〜」
っ……!完全に遊ばれてる……!!
「ううっ……やへてくだはい……」
「あはは、ごめんごめんちょっと意地悪しすぎた」
「もう……」
「あ、そうだ」
「へ?」
先輩はハッとしたような顔をして、私の脇に手を当てて抱き上げ、膝に乗せられてしまった。
「本当、軽すぎて心配になっちゃうな」
「うううっ……」
先輩の向きに座っているから視線がぱっちり合っていて、恥ずかしい。
「恥ずかしがってるの?ほんと可愛いんだけど」
そう言った先輩はぎゅっと私を抱きしめ、首筋に顔を埋めた。
「く、くすぐったいですっ……!!」
「我慢して」
「で、でもっ……ふふっ……あははっ……」
う、動かれると尚更くすぐったい……!!
「……ねぇ、真白ちゃん」
「?」
「キス、しよう?」
「ふぇ!?あ、は、はいっ……!」
よくわからないけれど……とりあえず、私は目を瞑る。
その時だった。
ガチャンッ
「ただいまー」
ま、真冬!?
慌てて私は先輩から離れる。
あ、危ない……見られるところだった……!!
「あーあ。残念。」
「ううう……」
本当に、恥ずかしくて死にそうだっ……。
「で、真白ちゃんはなんで悪いことしちゃったの?」
「え、姉ちゃんなんかしたんすか?」
「そう、僕のことほったらかして浮気」
「な!?浮気なんてしてません!!」
先輩は思い込みが激しい……!!
「じゃあ、正直に言ってよ」
「だから、私は莉奈ちゃんと買い物に行ってたんです!!」
「じゃあ、それなに?」
先輩が指を差した先にあるのは私が莉奈ちゃんと買ってきた先輩への誕生日プレゼントが。
「こ、これはっ……ひ、秘密です!女の子同士のことなんですから、突っ込んでこないでください!」
「へぇ……浮気相手との証拠品でも入ってるの?」
「だからちがいますってば!!」
けど、先輩に見せるわけにはいかない……!!
「……なに、見せてよ」
「だ、だめです!」
「……怪しい」
「だ、だからこれは……!!」
先輩への、誕生日プレゼントだからっ……!!
でも、だめだ!
どんどんとプレゼントに迫って行く先輩。
もう、正直に言うしかない……。
「先輩への、プレゼント、です……」
「……え?」
目を丸くする先輩。
「だからっ……先輩への、誕生日プレゼントを莉奈ちゃんと買ってきたんです……!!!」
「それ、本当?」
「はい!嘘なんてついてません」
「……ごめん、僕すっかり勘違いして……」
「いえ。私こそ、すみません……先輩を不安にさせてしまって……」
「いや、真白ちゃんは悪くないよ。ほんっとごめん。僕、真白ちゃんが誰かに取られたら嫌だって思ってる感情が勝っちゃって……」
そっか……それは、きっと先輩が私を一途に思ってくれてるってことな証拠だ。
「なんだか、複雑だけど嬉しいですっ……!!」
「あー……ほんと真白ちゃん優しすぎて天使」
「え、えへへっ……大袈裟ですけど嬉しいです……」
天使だなんて、言われたことな———
『真白ちゃんは、天使みたいだね』
あ、あれ……?
知らないはずなのに、どこか懐かしい相手が頭をよぎる。
だ、誰……?
とっても綺麗な可愛らしい顔をした少年が、泣きながら私にそう言ってくれている映像が流れる。
「っ……!」
「?真白ちゃん!?どうしたの?」
先輩に両肩を掴まれてハッとする私。
「あ、いえっ……!な、なんでもありません……!」
「そっか……。ならよかったけど……」
心の底から心配しているような先輩。
その姿は、どこかで見たことのあるような気がした。
重なる、懐かしい感じの姿。
クリーム色の優しい髪色に、綺麗な紫の瞳の千星先輩に、
その姿と重なって、きっと千星先輩の小さい頃はこんな感じなんだろうなと思えてしまうぐらいの少年。
けれど……きっと、私の妄想だ。
先輩と小さい頃からいたかったと言う、ただの妄想。
*
2日後、先輩のお誕生日にプレゼントを渡すことができた。
「え、めっちゃ可愛いし嬉しい!ありがとう真白ちゃん!!家宝にするね!!」
「えへへ、喜んでくれてよかった!」
いつも通り大袈裟に褒めてくれる先輩。
とっても嬉しかった、けれど……。
なんだか、モヤモヤしている。
もしかして、私は先輩と小さい頃会っていた……?
そんな、期待なのか理想なのかわからないことが、ずっと頭の中を呪っているようだった。
*
これは、僕がと真白ちゃんが幼い時のこと。
僕たちは、偶然にも出会うことができたのだ。
それは、僕がもう勉強が嫌で屋敷を抜け出した時のこと。
『はぁ……はぁ……』
バタンッ
屋敷からずいぶん離れたところまで全力疾走をして、もう力もなく倒れてしまった。
『っ!大丈夫?』
そこに手を差し伸べてくれたのが、真白ちゃんだった。
キラキラして、当時の僕には天使、いや女神に見えた。
『あ、ありがとう、ございます……』
『ふふっ、いえいえ。あ、血出ちゃったね、膝から……』
『このぐらい別に……』
『だめだよ!あそこに公園あるから、そこで洗おう?』
優しく微笑んでくれる真白ちゃん。
『わかり、ました』
公園につき、膝を洗い、そのあとは真白ちゃんが持っていた絆創膏を貼ってもらった。
本当に、こんな親切してくれるなんて、きっと僕が誰か知っていてお金目当てなんだななんて思っていたけれど……。
『僕のこと、知ってますか?』
そう問うも、真白ちゃんは本気でわからないような表情をして、
『ご、ごめんなさい……知らないです……』
申し訳なさそうに、そう言った。
『いや、こっちこそ変なこと聞いてごめんなさい』
『いえ……!!』
そんな感じで……絶対に偽りのないとわかる、純粋な彼女に徐々に惹かれて行った僕。
屋敷からは時々抜け出して、その時に会って遊んでいた。
けれど、それが母親にバレた時。
ものすごい説教をされるかと思ったら……。
『あら、真白ちゃんって、冬奈(ふゆな)ちゃんの娘じゃないの?』
『え?そうだけど……』
まさかの、母親同士、いや夫婦同士で小学生の頃からの幼なじみだったことが判明。
実は3歳の頃にも何度か会っていたと言う。
相手が真白ちゃんだったため、将来婚約者は真白ちゃんがいいと言ったら許してもらえることができた。
それは、超一流の小学校に編入するのを条件に。
そのためには学校に近いところに引っ越す必要もあって、複雑だったけれど、真白ちゃんとの将来のために僕は引っ越すことを決意した。
引っ越して、小学生になってからは、嫌でも勉強をして、どんどん知識を身につけていった。
そして、中学校は真白ちゃんが受験するという学園になんなく入ることができて、2年間ずっと待っていた。
……で、まさかの僕たちは片想いで結ばれることができたのだ。
しかも、真白ちゃんは小さい頃から変わらず純粋無垢でびっくりした。
ほんと、あの子は僕が守って行く。絶対に。
……そしていまは、婚約の話を自分の両親と話しているところだ。
「私は、千星は真白ちゃんと結婚するためにとっても頑張ったんだから、婚約には十分賛成よ」
「……ああ、俺も同意見だ」
「じゃあ、もう少ししたら真白ちゃんに婚約の話、持ちかけてもいい?」
「それはまだやめておけ」
「なんで」
僕は、早く周りに真白ちゃんが僕の婚約者だから近づくなと言いたい。
絶対に、真白ちゃんが離れて行くなんて許さない。
「真白ちゃんはまだ中学一年生なんだぞ?せめて真白ちゃんが高等部に上がってからにしろ」
「……はいはい、わかりましたよ」
父さんになんか言ったって無駄だってわかってるから……仕方ない。ここは我慢するか。
……少しだけ。2年半の辛抱なのだから、いままで真白ちゃんに片想いしていた時と比べれば、ほんの一瞬にも感じられる。
「それで、お前に話がある」
「なに?」
真剣な顔をしている父さん。それに、母さんまで。
「……小華井、美玲、わかるか」
「さぁ」