参道の脇には小さな神池があって、小さな太鼓橋が申し訳程度に架かっている。
 その橋の上に立って、欄干に手を置いた。
 水面は闇に溶け込んで、見えなかった。

「何が、いけなかったのかな……」

 私は、一生懸命やってきたつもり。
 苦しくても辛くても、歯を食いしばって頑張れば、必ず報われると信じてた。

 なのに……。

「さくら」

 急に名前を呼ばれて、驚いて声のした方を向くと、暗がりに白いシャツ姿がぼんやり見えた。

「哲也……」

「さくら、なんで無視するんだよ」

 哲也はそう言いながら駆け寄って、小さな太鼓橋の上で私と並んだ。

「……あんたには関係ないでしょ」

 どこかで待ち伏せしてたのか、ずっと後をつけてきたのか、どっちにしても鬱陶しい。

 哲也は幼なじみだった。付き合いの長さだけなら萌音よりも長い。

 小さな頃はそれなり仲が良かったはずなのに、中学にあがる頃から急に私のすることに、あれこれ口出しするようになってきた。

 やれ、髪を伸ばせ。
 スカートが短い。
 誰某(だれそれ)と気安く口をきくな。
 昨日どこに行っていたんだ……etc。

 その挙げ句に「俺のことどう思う?」なんて訊かれても、鬱陶しいとしか答えられない。

 そんなことが続いて、最近はずっと哲也のことを無視していた。

 荒い息をしている哲也に、私は言った。

「なんでついてくるの?」

「さくら、お前が心配なんだよ」

 私はきっと、(にら)みつけた。

「心配してくれなんて頼んでない。私のことは放っておいて」

「素直になれよ、さくら」

 さすがにカチンときた。

「素直って何よ、あんたに私の何が分かるって言うの?!」