地元の駅で萌音と別れて、私は一人で日の暮れた街を歩いた。

 駅から続く大きな通りを歩いて行くと、右手に石造りの鳥居が見えてくる。私の街の鎮守さまだ。
 
 この神社の境内を抜けると、私の家への近道になる。
 普通はこんな時間、暗くなった神社の境内を横切ったりしないのだけど、私は石段を上がって、鳥居をくぐった。
 一人になりたかったのかもしれない。
 
 大きな松の並木に囲まれた神社の境内は、案内板の蛍光灯や常夜燈の明かりがぽつぽつ灯るだけで、静かに闇に沈んでいた。
 そんな静けさを、玉砂利を踏む音で乱しながら歩いていくと、ふいに耳の奥で、試合中の裕子の声がこだました。

「さくら、いい加減にして! あんた一人で試合してるつもりなのっ?!」

 相手チームのパスをカットしてゴールに迫った私が、コートを蹴って放ったレイアップシュートは、相手チームのセンターに阻まれて、リングを揺らすことはできなかった。

 ボールごとコートに叩きつけられた私に、チームメイトからかけられた言葉は「ドンマイ」でも「ファイト」でもなくて、「いい加減にして」だった──。