「動さん、あの投稿は本当に舞々の友達からですよね。」
 赤川蘭子は延岡動に尋ねた。
「おそらくそうだと思うよ。舞ちゃんだって嫌な男の手をギュッと握りしめたり身体(からだ)をすり寄せながら〈お客様、私のレジへどうぞ。〉なんて言ったりはしないだろう。」
 延岡動はすかさずそう言ったのだが、赤川蘭子は違和感を感じた。内広舞が興梠修一郎に何をしたかあまりにも知りすぎているような気がした。
 あの投稿を読むように指示を出したのはディレクターの木藤真帆だ。動と真帆が何かの企画で舞々を利用しているのかもしれない。だとしたら繊細な舞々は壊れてしまう。
 赤川蘭子は自分の進退以上に内広舞が気がかりだった。

 赤川蘭子が話し終えた後、延岡動は背を向けて歩きだしニヤリとした。〈興梠の野郎、舞のハニー・トラップには掛からなかったが今度は女の涙作戦だ。いくら何でもこれには掛かるだろう。これで掛からなかったら鬼のような奴だという印象を植え付ければいい。俺にタダで原稿を寄越さなかったんだ。この恨み晴らしてやる。〉