「今日も来てくれたんだ。」
 内広舞の頭の中は嬉しさ寂しさでごちゃごちゃだ。レジに人が並んでいない時に一生懸命話しかけても修一郎は会話を手短に切り上げてしまう。修一郎にすれば自分が他の客にからかわれたりネット上で誹謗中傷されるのは気にしないのだが、舞が影で色々言われるのは心配だ。
 この修一郎の気持ちは当然だが舞には届いていない。

 舞はショップの釣り好きなスタッフが〈修一郎と吉野由利はよく港にいる〉と言っていたのを思い出して話しかけてみた。
「昨日、仕事が終わった後に友達と港に言ったんですよ。」
 修一郎は舞の目を見つめてにっこり笑い頷いた。舞は修一郎の優しい眼差しに癒されても話しかけてくれないので寂しい。
 舞にはもう一つ気になる事があった。修一郎と由利が雇用主と被雇用者なのは分かった。由利は夫や子供とも一緒に来店する。只、修一郎と同じ時間帯に頻繁に店に来る一人の女性はとても気になる。知り合いか偶然かは判らないが、時折サッカー台で一緒に袋詰めをしながら親しげに話している。その会話の内容はまるで喧嘩をしているように言いたい放題の親密さだ。
 女性の名前が五月(さつき)である事だけは判った。