内広舞の勤務している〈FUNKY food〉は食品を中心に商品展開をしている。品揃えは海外国内を問わず少々高価であっても仕入れるので、それ相応の客層で客単価も高い。そして舞はレジ部の筆頭主任だ。
 
 舞が本店から駅前の近くの支店に異動して来た時、一日に二回店を訪れる男がいた。それが興梠修一郎だ。
 修一郎は通常の顧客と違い商品を大量に購入することはなかった。昼と夕方に惣菜を一二点(いちにてん)食べる量だけ購入すると言ったコンビニで買うような買い方だったので舞は修一郎の事をすぐに覚えた。

 ある日、舞は大学生の男性アルバイトに修一郎の事を尋ねた。
「あのお客様は昔から一日二回来てるの。」
「ナチュラルグッズの頃は閉店前に一回で、定年退職をされてからコンビニでアルバイトを始めて一日二回になりました。」
「グッズに居たのね。」
「はい、グッズの惣菜部門に居たそうです。」
「それで惣菜ばかり買うのかしら。」

 〈スーパーの惣菜部門からコンビニね。どちらも惣菜は主力商品だわ。〉 アルバイトのスタッフとの会話から修一郎の事を少しだけ知った舞だったが、一番驚いたのは定年退職していたという事実だ。つまり修一郎は五十代後半から六十代と言う事になる。舞には修一郎が四十代前半から半ばに見えた。