修一郎は運転席に座るとシートを倒し
「少し眠るぞ。」
と言いウトウトし始めた。由利はその間に原稿を読む事にした。
 数分経つと修一郎は目を覚まし、
「戻るか。」
と言った。

「それじゃ先生、本題に戻りましょうか。」
「突然なんだよ、本題って。」
 由利は修一郎が今一番気になっている女性は誰なのか確認しようとちょっと意地悪な質問をした。

「先生は今、何を考えてます。」
「おかしなこと聞くな。運転中だから運転に決まってるだろ。」
 修一郎は当然のごとく答えた。
「ですよね。じゃあ、五月さんとさつきちゃん、そして弥生さんと内広さんでは誰が一番気になります。」
「さつきちゃんかな。」
「真面目に答えてるんですか。」
「もちろん大真面目だ。一番若いから一番将来性があると思うのは当然だろ。」
「そうじゃなくて、先生個人がどう思ってるかです。」
「今更それを言わせるのか。弥生に決まってる。一緒に過ごした時間だけじゃない。本音で語り合ったかけがえのない時間を共有している。内広さんは真面目な仕事ぶりから、この人なら何もかも話して心の中から弥生を押し出してくれたら嬉しいとは思っている。それと〈幽霊は実在して昼間も現れるのか〉だ。」

 考え込んで話す言葉をまとめきれない由利に修一郎は言った。
「今、ウトウトしている間にもの凄い夢を見たよ。」