見ているこっちまで楽しくなってしまう。
気が付けばもう日下部の事など視野に入っておらず、今のこの時間を楽しもうと全力で叫ぶ一瞬一瞬に釘付けになっていた。
夢中で眺め、そこに集中していたからか「園村さん?」と呼ばれたことにも気づかず、二回目の「園村さん?」の声でやっと反応した。

「はい」

振り返るとそこには顔と名前の一致しない男子生徒が立っていて、「そこいい?」と訊いてきた。

「あ、ごめん、どうぞどうぞ」

場所を占領していたから邪魔でこられなかったのか、コップと少しのお菓子を持ったやよいがそそくさとその場を後にする。

「あ、ちょっと待って。園村さんに用があるんだけど」

「え?私?」

面識の無い男子が一体何の用だろうか。
やよいの声は怪訝さに少し上ずっていた。

「俺二組の横山っていいます。あの、前から可愛いなと思ってて、よかったら俺と付き合ってもらえ、ませんか?」

恥ずかしげに目を泳がせ、はにかんだ横山が一歩やよいに近付いた。

突然のことに驚いたやよいが、持っていた紙コップを落としそうになり、慌てて掴み直す。
すると代わりにお菓子が落下、地面に散らばる

えっ、なに?
付き合うっ!?
どゆこと?