目の前の日下部が本来の日下部なら、ただ日下部の一部を見ただけで抱いたあの気持ちは本物の恋だったのだろうか、と。
今の距離感、今の日下部との関係がなんであれ、恋に落ちるきっかけならこちらの方が納得がいく。
だからこんなにも───
こんなにも───

あのとき好きだといっていた気持ちと、忘れられないどころか膨らむ一方を自覚したこの気持ちが同じなのかどうか。

「だから、なんていうか、あの時の私はほんまにちゃんと好きやったんかなって…、日下部くんの事何にも知らんくせに好きってなに言うてたんやろっていうのも同時に感じる。日下部くんが私に言うた通り、何にも知らんのに好きとか怖いっていうの、そうやなって思った。だからあの時フラれてよかったんやと思う。今やったらもうすっごい好きやろうから立ち直れてなかったはずやもん」

二度と言わんがどう言うことか。
もう完全に告白もどきだった。

私なに言うてんの!!
もうあかんいうたやん!!
なんで何回も告白すんの!
何回傷付きたいん?!
私マゾなんか!?

けれど顔を背けたりしたら嘘っぽくなってしまう。
改めて自覚した日下部への止めようもない想いも、彼にぶつけた事実も。
実際どんな日下部を見ても、どんなに嫌がらせもどきなことをされても、何回フラれようとも気持ちは変わっていない。
けれども、この気持ちは二度と口にしないと決めた。
次にフラれるなら別の人がいい。

「なるほど」

それしか答えられなかった。
答えることがないのではなく、答えられなかった。
やよいの想いが大きくて、暖かくて。
相手の事を考えている気持ちがちゃんと伝わってきたから、それに水を差すようななにかを言わない自信がなかったから。