まだ気まずくてついぎこちなくなってしまった。
日下部はふーんとだけ返して、その場に座っている。

「日下部くんはなんでここにおんの?」

「帰り道だからね、ここ」

「あ、そうなんや」

え、そうなん??
全く知らんかった。

同じ道を登下校に使っていたとは全く知らず、まさかの遭遇にタイミングの悪さを痛感した。
知ってしまったから、いやでも意識してしまう。
だが、今まで出会うこともなかったのだから時間をずらすなど小賢しいことしない方がかえっていいかもしれない判断に落ち着いた。

「そしたらなんか、一人でぶつぶつ言う園村さんがいて、で、おんなじ方向歩いてたらいきなり、関西弁は母国語だとか俺が男前だとかなんとか叫んでスマホ投げ捨てたかと思ったらすごい勢いで坂下るから、危ないから後追っかけた」

で、今に至る。

「え、わりと最初の方から知ってたんやったら何してんのとか聞かんといてよ」

恥ずかしさで顔が火照り、また血の気が引く。
嫌な感覚が眉間にシワを寄せさせた。

「ほんとはどうだったのか分かんないから勝手なこと言えない」

だとしても、聞かれていたことを知らされるのと知らないままでは事情が違ってくる。
しかも日下部が見て聞いた通りで、勝手なことなどなにもない。
日下部くんが男前だとかなんとか叫んだのを本人に聞かれてしまえば未練があると思われかねないし、告白云々の事実がなかったとしても聞かれて気まずさがないわけなど無い。
恥ずかしさに磨きがかかる。

「最悪や。恥ずかしすぎるわ」

スマホの事がなければダッシュで逃げていた。

「でも顔は逸らさないんだね」

「え?」

ポツリと呟いた日下部の声が聞き取れず、聞き返すがなんでもとぶつ切りされてしまった。