もしかして失恋した人もいるのかなと、そちらが気になってしまう。
もしそうなら今頃どんな思いだろうか、さぞかし気まずいだろうなと、自分の傷と重ね合わせて胸がチクりと痛んだ。
そこへ食材を持った日下部が合流すると、タイミングのよさに変な汗が出てしまった。

「じゃあお米回収ー」

回収に回ってきた米研ぎ担当の女の子に促され、バックパックから米を取り回収袋へ入れる。
班全員分の米を確かめると、同じ班のもう一人の男子と並んで洗い場へ歩いていった。

「米研ぎあいつじゃないよな」

同じく二人を見送っていた日下部が、尻ポケットに挿していたしおりを取り出し担当の名前を確認する。

「あー、なんかあの二人さっき付き合い始めたらしくて、当番変わってって言われて…変わったの」

万智が言いにくそうに答える。
やよいの心情を考え場当然か。
ただ変わっただけと伝えてもなんで?となって結局結果は同じ。
ならば変にこじれないようさらっと先に言った方がいいと考えたのだ。
けれど、今はあまり聞きたくなかった情報に息が詰まった。
僻みや妬みではない。
うまくいってよかったと思う気持ちは本当で、楽しいキャンプがさらに楽しくなるだろうなとこっちまでうきうきする気持ちも嘘ではない。

ただ、事実が重いのだ。
フラれた自分と成功した側との隔たりというか、自分はそっち側ではないことを思い知らされたようで辛かった。
出来たらこの話題は避けて他の事を話したい。
なにか、なんでもいいから、どんな下らないことでもいいから。
いいなぁ、羨ましいなぁ、など、日下部のいる前で絶対口にしたくない。