カレーは辛口甘口の好みが分かれてしまったため、協議の結果シチューとなった。
しおりを広げ、火起こしの手順を確認する。
開いたページが風によって揺らされる度に、やよいの体もぶるっと身震いした。
天気予報の通り朝から太陽は顔を出さず、ずっと曇っていて山だと少々肌寒い。
加えていつ降りだしてくるかもしれない危うい空模様だ。
体操服の長袖を着ている人の方が多いかもしれない。
やよいも万智も上だけ半袖で、下は長ズボンをはいている。
夏直前ではなく秋直前ではないかと思えるほどだ。

「雨降らないで欲しいなぁ」

屋根付きの調理場で、最初から用意されていた薪を並べていた万智が空を見上げて呟いた。
山の天気は変わりやすい。
特に昨今はいつ降りだすとも分からない雲の発生もあるため、一口に雨と言っても対処法方も変わってきてしまう。

「ほんまやね、キャンプファイヤーも出来やんしね」

夜の方がイベント豊富で、調理も含めてここからが本番なのだ。
キャンプファイヤーのあとは肝試しもあり、その前に告白を済ませて勢いで付き合うカップルも少なくない。
現に昼の休憩の時、複数カップルが誕生していた。
結構な賭けでもあるが、こういう雰囲気に飲まれて残念な結果に終わることは少ないという。
自分もこのタイミングを狙うべきだったとやよいも一瞬思ったものの、日下部が雰囲気に流されるタイプでもないなと考え直した。