それをわざわざ時間をかけて伝える必要があるのか…と。
楽しい思い出をと言うならこの時間をまず省いて欲しい。
おそらく世の9割近い学生が考えていることだろう。

長い長い到着式が終了し、荷物をまとめるために割り当てられた部屋へ移動する。

「おじゃましますー」

中へ入ると、少し埃っぽさの混ざった木の香りが出迎えてくれた。
天気がよければそこにお日様のに追いも合わさっていただろう。

「広いねぇ」

木で出来た建物は暖かみがあり、どこか懐かしさも漂わせている。
全ての棟が二階建てで、計十二人での一泊。
顔も名前も初めて知りました、ということも珍しくない。
やよい達の使用する部屋は一階で、一緒に使うグループの女子は隣のクラスの生徒だった。
部屋の中は寝るだけを地で行く仕様。
必要以上のものはなく、シャワールームとトイレ、ベッド…、という感じのシンプルなもの。
どのベッドを使うかじゃんけんで決め、必要なものだけを持って再び集合場所へ向かった。

「よーし、じゃあ班行動開始するぞー。夕食は六時。薪が足りなければ宿舎の裏にあるから各自で調達。くれぐれも怪我のないように。リーダーは食材取りにこーい」

昼食を済ませ、休憩を挟んですぐ、いよいよ本日のメインイベントとの一つとも言える夕食作りが開始された。