でも何を言っていいかどういう態度が相応しいのか分からなくなって、思わず「もうぅっ!」っと唸ってしまった。
歯がゆさ、苛立ち、モヤモヤ、そんなやよいの心のうちを知らずに惚れる餌を与えてくる日下部に向かっての最大限の威嚇。
日下部はそれを興味深く眺めていた。
二人の間を宥める形で風が通ると、次に一旦一呼吸置くというにはあまりに激しい強さで吹き込んできた。
ビュッと音を立てて壁を叩く。
その後、積んであったプリントが風を含んで盛り上がり、何の躊躇いもなく部屋中へ飛び散った。

「えっ!?」

せっかく苦労して仕訳をし、居心地の悪さに耐えながらまとめたものがあっけなく部屋中へ飛散していく。
やよいは急いでプリントの山を手で押さえ、これ以上吹き飛ばないようガードする。
それより先に日下部が窓を閉めた。
風が止まり、舞っていた最後の一枚も落下してくる。

「ったく、いままでの苦労…どうしてくれんの」

温度の薄い文句は風に向かってだと分かっていても、自分に言われた気がしてならない。
チクチク痛むのはもううんざりだ。
今日はもう、充分味わった。

「後は私やるから日下部くんもう帰んなよ」

床に膝を付き、バラバラになったプリントを拾っていく。

「は?何でそうなるの?二人でやった方が早いに決まってるでしょ?」

不愉快さが滲む声色で、即座に返される。
絶対言われると思っていた。