そこへ最後の一人が担任との打ち合わせを終えて戻り、最後まで空いていた席に腰を下ろした。

「お待たせ、まだ…始めてない感じ?」

ふわりと香るこの匂いと、耳触りのよいこの声。
嫌な具合に、やよいの心臓が跳ねた。

「やっぱリーダー来ねぇと始めらんねぇ」

いたずらっぽく返す言葉に、隣からは地を這うため息が落とされる。
不安げな表情を浮かべた万智がガッツポーズを送ってきた。

「あ、そ。じゃあさっさと終わらせたいんで巻いていくよ?」

「よろしく総司リーダー」

なんてこった…。

またねはもうないと啖呵を切ったはずだったのに、またねが来てしまった。
そう、やよいの隣、最後まで空いてた席に座ったのは、この班のリーダーでもある日下部総司だったのだ。

「同じクラスなのに、またねがないわけ無いよね」

やよいにだけ聞こえるように呟き、プリントに目をやった総司がこの上なく意地悪に笑う。

私ってやつは、どんだけうっかりバカなんやろうか。

自分で自分を呪って、二度と無計画に物事を進めることがないよう徹底的にしばいてやりたい。
早く、一刻も早く何とかしなければ授業中だけでなくいつでもどこでも総司への気持ちをぶちまけてしまうと恐れたやよいであったが、愚かにも同じクラスであることを考慮していなかったのだ。