経験者でもある聡い義母はすぐに気付き、父親を問い詰めた。
そこからあっという間に夫婦関係もギスギスし始め、今ではもう修復の余地が見られないほどまで悪化している。
その渦中に置かれたのが日下部と弟。

自然と互いを守る機能が働き、結束も強まったのだという。
弟もずっと日下部に罪悪感を抱いていた。
ある程度の秘め事や大人の遊びを理解できる歳になって、自分の両親がいくつも年の違わない兄の家庭を壊した事を知り、日下部に申し訳ない思いで一杯になったのだ。
彼もまた、犠牲者だった。
今も犠牲者だ。

「関西弁、笑えるわけやなかった?」

ただただ当たっただけだというのなら、もしかしてこれも根拠が薄いのではと感じたやよいが遠慮なく追求する。
こんな時に、と、苦笑する日下部。

だから俺は───

「違う。自分と違うものを叩いてやりたかっただけ」

「酷いわ」

「だね、ごめんね」

「ええよ別に。許さんけど。謝罪は受けとる」

こういう場面は決まって許す展開になるのに、どんな時でも妥協をしないはっきり物を言うやよいが眩しい。
納得いかないものはいかない、そういうスタンスは場面を選ばずブレない。
同情されて本音を隠されるなんてまっぴらな日下部には、ちょうどいいパンチだった。

「もうバレバレだろうけど、君が気になって仕方なくなってた」

さらっと溢されたネタバレに、やよいはついていけずポカンと口を開ける。

え、
どのへんが?どのあたりで?