どちらか片方の親ならまだ明るい自分を想像できても、両親ともに難有りとなれば当然、下らない人生の未来像しか描けない。
しかしやよいには合点がいかなかった。

「組み込まれてへんやろ。組み込まれてたら日下部くん、私とも前の彼女とも付き合ってんで?なんやったら同時進行ちゃう?」

きっとあんなふうに元彼女の事も考えたりしない。
そんなに女狂いなのなら、生理的に受け付けないなど特殊な理由がない限り、来るもの拒まずだっただろう。
自分の事を図々しく、生理的に受け付ける部類にしたことがちょっと恥ずかしいけれど。

「そうかな」

「そうやで」

でなければこんなに悩んでいない。
悩んでいなかったとして、もっと開放的でおそらくやよいは惹かれてもいないだろう。

「あんなだから家にも居づらくて、高校出たら他府県の大学へ進学するつもり。その方があの人も喜ぶし、父親も頭いい大学入るならなんの文句もないからね」

高校でたら、おらんのや。

日下部のいないこの街を想像して、どこに行ってもいないのだと思うと、彼の望みだと分かっていても寂しさで胸がきゅっと泣いた。
高校を出ても付き合いが続いている保障などないし、そのままぷっつり切れるかもしれないのに。
漠然と、どんな関係であってもこのままこうしていられると思っていた。

自分が情けない。
卒業すると、状況は変わる。
明日からだって、日下部の隣で笑っていられるとも限らないのに。
浅はかな願望が漏れ聞こえませんようにと、密かに祈った。