三人が同時にため息を吐く。
勉強に疲れて息が詰まりそうだったわけではなく、尚太の作り上げたこの空気にだった。

「だぁぁぁっ、なんかっ、窒息しそうっ」

最初に口を開いたのは尚太。
後ろにひっくり返り、頭をわしゃわしゃかき乱す。

「誰のせいよっ、もうっ。ほんと無神経なんだから!あんなこといちいち持ち出さなくてもいいじゃないっ。人には知られたくないことだってあるのっ!尚ちゃんの知られたくない話もばらしてあげようかっ!?」

え、なに、聞きたい。

と思ったけれど、この空気を一掃できるほどでもなさそうなのでやめておく。

「いやだって、まさか、まさか…」

やよいっちが総司を好きだとは思わなかった。
とでも言うのだろうか、そうはさせまいと万智が渾身の力で睨み付けた。
尚太の背筋が伸び、転がっていた体が勢いよく起き上がった。

「あいつたまに、恐ろしく冷めた顔すんだよ。だからまぁ、心配っつうか…」

口を尖らせ、拗ねた口調は友達を気遣っているものまんまだった。
なんにも考えていないようで、実はちゃんと考えていた尚太をやよいも少し見直した。
やよいのことに関しても自分の事のように怒り、奮闘してくれたことも思い出す。
悪いやつではない。
ただ、少し、どうしようもないだけで。

「だってむちゃくちゃ鬼畜っつうか冷たいっつうか、俺このままじゃ心折れんじゃね!?てかさ、女いない人生ってどうなんだっ!?ずっと作らないとかあり得なくね?」

殴ったろか、こいつ。
それだけか、それだけがお前の生きる糧か。