とんだ勘違い、あらかじめ用意されていた展開を知らないのはやよいだけであある。
なんで連絡取ろうとしないのか、意味が分からなかった。

「ていうか、日陰で大人しくしてなよ」

川と戯れてるなんて一ミリも考えていなかった日下部は、呆れも混ざって少し説教じみた口調だ。
若いとはいっても無謀は危険。

「待ってるだけって退屈やったから。日下部くんもやる?」

「久しくやってないなぁ」

川の方を観て、子供の頃に少しやった水切りを思い出す。
記憶を辿っても、小学生の頃に友達と楽しんだのが最後だ。
あの頃は全く上手くできずに悔しい思いをした。
足元の石を眺め、どの石がいいとか悪いとか言っていた自分達を思いだし、懐かしさに顔が綻んだ。

「私よう飛ぶよ」

いつの間にかよさそうな石を拾っていたやよいが先に投げ、水面の上を華麗に走らせた。
自分でいうだけのことはあって、なかなか上手である。
最初は大きく跳ね、そのあと数回幅を狭めてバウンドすると、あとは水面を走っていく生き物のように小刻みにステップしていく。
川の真ん中までいくと見えなくなってしまった。

「すごいね…見えなくなるまで跳ねてたね。出来たこと無いんだよなぁ、俺」

水面を反射する光りに目を細め、昔の自分を懐かしむ日下部が少し幼く見えて、少年の心がよみがえったような表情に、やよいの胸がキュンと鳴いた。