知りたかった。

やよいが今何を考え、どう思っているのか。
好きな相手には酷い言葉を投げ掛けられ、関係ない輩からは水をかけられ、それでも恨み言も悪口も言わずに自分を奮い立たせていたやよいが、どう感じているのか知りたかった。
だからこっそり聞いてしまっていた。

静かにカーテンを引く。
布団を掛けず、上向きになって眠るやよいがいた。
涙の跡がまだうっすら残っている。
こんなことなら自分が届けになど来なければよかった。

尚太と万智を探してはみたものの、どこへ行ってしまったのか二人の姿はどこにも見当たらなかった。
おそらく連中を捕らえ、酷く迫っているのだろう。
彼女達に同情する余地はない。
だから持ってきたのだ。
勝手に女の子の荷物を触るのも抵抗があったが、六限目が終わってからだと人目に曝されながら帰らせることになる。
校内を自由にた出歩けない今の時間に、やよいをここから逃がしてやりたかった。

やよいの額に指を添え、未だ固まって乾いてしまった髪を解す。
泣きつかれて寝るなんて、子供みたい。
いつもならそんな軽口も叩けるのに。

「わかった…」

そう呟いた日下部はやよいの髪を撫で、露になった額にそっと口づけた。