蛇に睨まれた蛙とでも言うのか、日下部にすごまれたやよいは、「はい…」と返事していた。

「ぃやったぁぁっ、期末楽々クリアかくてーい」

「やったね尚ちゃん!」

ハイタッチして喜ぶ二人。
日下部からテストのヤマを教えてもらえれば、もうなにも怖くないと言った様子。
なんなら遊んで過ごせる勢いだった。

「そこ二人に教えるとか誰も言ってないから」

ピースを寝かせて二人に突き出した日下部が喜びを一刀両断する。

待って、そんなん二人きりなるやん!

そんなことは断じて避けたい。
勉強に集中できず、ただでさえ理解力が追い付かないのにプラスアルファで頭の悪さが露見してしまう。

「二人でとか絶対嫌やから!!」

「なに?二人だと俺に危害加えられたときに証人がいないから?」

なんなの君は。
そこまで拒否する理由なんなの?

思い当たるふしは日下部にも有り余る。
そりゃそうだろうと納得も出来る。
けれど、ここまで拒絶されると嫌われているみたいで腹が立った。
やよいを拒絶したのは自分の方なのに。
とはいえ、頑なに嫌がるやよいに若干イライラしてしまう。

「私にっ、危害っ、加えんの??」

本気で怯えるやよいが可笑しい。
不安一色に染まる瞳は弱いのに、向けられる目の力が強くてまた逸らせなくなる。
ちょっとからかいたくなった日下部の、悪い虫がうずく。

「その方が効率いいならね」

「もう、なんも言いません…」

何を言ってもこの流れは回避できそうにない。