日下部の瞳が細められ、温度の無い角度で唇の端がゆっくり上がる。

「へーぇ、俺ってそんな怖いんだぁ」

笑っていない。
日下部の顔は完全に笑っていなくて、怒っているというものではなく、感情がよろしくない方へ静かに波立っている感じ。
暗殺者が標的に煽られた際、殺意がパワーアップするときのそれに酷似している。
尚太がケラケラ笑っているのがまた、日下部の冷えたパワーを助長させていた。 
やよいの挙手した手が、だんだん力無く下がってくる。

「あっ、や、いや、違うで?たとえやで?もしもやで?かもねぇ、みたいな、そうなんかなぁ、どうなんかなぁ、かもねぇいうか、分かりやすく言うてみました、みたいな。日下部くんが鬼みたいとか鬼畜とかやなくて…、言い方悪いな。言い方悪いねん、私。そっ、ほら私の語彙力なんてこんなもんやし、ははっ」

ドツボである。
一言一言、日下部の表情を確認しつつフォローを入れたものの、結果は全て真逆の方へ作用した。
言えば言うほど、日下部に黒いもやがかかる。
腕組みをして微笑む日下部は、完全に絶対零度と化していた。

「俺ってそうなんだぁ。鬼畜なんだぁ。そっかぁ…ふーん、じゃあそのたとえもよろしくないから、そこから勉強しようね」

「は、い?べんきょ…」

日下部先生、目が笑ってません。