放課後の教室、机の上に置かれた大量のプリントと教科書。
全教科の試験範囲をまとめて並べてある。
それらを眺めるやよいは、ただ今儀式の真っ最中。

期末試験が発表されたのである。

やよいのやっている儀式なるものは、試験終了の日まで自分がどれだけ勉強しなければならないか目に焼き付け、その重みを体に覚えさせるというもの。
いわば覚醒、眠っている自分自身のやる気と目覚めていない学力に働きかけるという、やよいが思い付いたまゆつば儀式。
受験の際、こうして神頼み的な雨乞いのような儀式をして今の高校に挑み、打ち勝ってからは縁起担ぎに続けてしている。

馬鹿げている?イエス。
効果はあるのか?全く無い。 
だが本人はいたって真剣の大真面目。
試験が来るといつもこうしていた。

こうしないと気合いが入らないのだとかなんだとか。
そんなことをせずとも、やらなければいけないものが見えているのだから自ずと奮い立つはずなのだが…。
周りからしたら全く理解できない行動である。
最後に拝んで一礼し、大きく頷いた。

「よし、帰ったらやる。一週間みっちりやる」

そう言うと、拡げていたものを集めて鞄に詰めた。

「やよい~?終わったのー?」

遠くで見守る万智にはもうすっかり馴染みの光景。
最初は万智も面食らっていたが、こんな面白い事をする人がいるのかと一気にやよいに興味が出たらしい。

「終わった。これで今回のテストとも向き合える」

儀式も納得のまま終わったらしい。
ガッツポーズはなんの現れか、やよいの中では掴めるものがあったのだろう。