いやいや、変わるで?
一個やったら二個目は止めとこてなるやん?
屋上来ることと授業サボることを同列にすんの?

「日下部くんが不良になってしもた…、ないわ、こんなんない、え、頭ぶつけたから?」

やってしまった。
学力に影響を及ぼしたのではなく秩序を司るなにかにダメージを与えてしまった…やよいにはもうそれしか考えられなかった。

「善悪の判断て右脳??左脳?日下部くん頭どこぶつけたっけ?」

「じっとして、寝心地悪い」

ほんまは分かってるけど邪魔くさいから答えへんのか?
それとも分かってたけど分からんくなったんか、どっち?

言ってるうちに本鈴が鳴り、条件反射で屋上の出口へ目を向ける。
あたふたしているやよいをよそに、目を開いた日下部が、まとまりきらずに垂れていた髪を静かに引っ張った。

「園村さんだけ戻る?」

日下部の双眼に捕まったやよいは、もう逃げられない。
逃げるつもりははなより無い。
最初から決まっている答えを口にした。

「残る」

日下部を見つめて、はっきり告げる。
こんなことを言うから、ばれてしまうのに。
どうしてうまくできないのだろうか。
日下部に対して自分の想いが筒抜けになったとき、いつも後悔する。
後悔して、日下部が微笑んだ後、また、後悔する。

「だと思った」

髪がつんと、引っ張られる。
向けられる表情が柔らかい。